第9話 ドナ・セント・ローレント
ギャルビン宮本です。

さて、



駆け出し弁護士修行企画『出演者に尋問!』



本日は、ドナ・セント・ローレント役の林佳代子を召喚しましょう。
どうぞ出廷してください。



ギャルビン宮本
「さて、カヨピン…おっと、厳粛な法廷でニックネームはまずい。僕たちは演劇学校の同期。その頃からずっとカヨピンと呼んでいるから、つい…。
君は原田さんが昴で初めて演出した『クルーシブル(るつぼ)』にも出演していたよね。身内の芝居を誉めるのもナンだけど、あれは面白かった。夫との別れのシーンは秀逸だった。
僕は原田さんとは今回が初めてで、稽古中にセリフがどんどん書き変えられていくのには面食らったけど、君は慣れてるんだろうね。」

ドナ林
「いいえ、慣れてはいないわ。やっぱり大変。でも、変えた分、お芝居が良くなるんだから。そう思うと苦にはならない。セリフを覚えるのは役者の仕事だもの。」

ギャルビン宮本
「君の演じる『ドナ』は知的な女性。僕との場面も多い。僕達はこれまで、恋人同士の役もやってきたよね。君が主役の『花嫁付添人の秘密』では、僕は君のフィアンセ役。『親の顔が見たい』では夫婦役。」

ドナ林
「それと、ニーナとトレープレフ。」

ギャルビン宮本
「え?」

ドナ林
「チェーホフの『かもめ』。恋人ふたりの場面を演劇学校生の時に抜粋発表会でやったじゃない。」

ギャルビン宮本
「ええと……やった、やった。」

ドナ林
忘れてたわね!

(ドナ林、証人席の柵の間から足を出してギャルビン宮本の足を踏む)

ギャルビン宮本
痛!何するんだよ!」



ドナ林
「私たちのいつもの儀式でしょ。」

ギャルビン宮本
…そうだね。
(懐かしそうに)演劇学校に入って間もない頃のある日、僕が新品のスニーカーを履いていったら、君は『あ、おニュー』って言って、僕の靴を踏んだ…僕が踏み返そうとしたら、君は自分の足をサッと引いて、引いたその足でまた僕の足を踏んだ…僕は君の俊敏さに感服したよ。」

ドナ林
「学生時代に殺陣同志会で鍛えていたからね。」

ギャルビン宮本
「それ以来、ずっと君に足を踏まれてきた…一体何年になるんだろう。
僕達、演劇学校を卒業して、もう何十年になるんだね。」

ドナ林
「私は8年よ。」

ギャルビン宮本
嘘つけ!サバ読み過ぎ。同期にならんだろ。偽証罪で告訴するぞ。」

ドナ林
「失礼。」

ギャルビン宮本
「あ、また踏んだ!



ドナ林
「ミツル、相変わらず鈍いね。」

ギャルビン宮本
「…話を戻そう。今回の君の役は、ひと言で言えばどんな女性?」

ドナ林
「そうね…ひと言で言えば、マドンナって感じ?」

ギャルビン宮本
「おいおい」

ドナ林
ドナって一体ドンナ役~。」

ギャルビン宮本
「法廷侮辱罪で訴えるぞ。」

ドナ林
♪ドナ・ドナ・ド~ナ・ドンナ役。

ギャルビン宮本
「裁判長!証人はふざけてます!」

ドナ林
「何よ、この企画自体、ふざけてるじゃないのよ。」

ギャルビン宮本
いやいや、決してそんな…。

ドナ林
「私、稽古で忙しいの。じゃあね!」

ギャルビン宮本
痛!あ、また…。」



(ドナ林、退廷)

ギャルビン宮本
「ああ…一流弁護士への道、前回やっと3歩進んだのに…。」

ドナ林
(遠くから)♪3歩進んで5歩下がる~。」



~~~~~




次回に乞うご期待…!



     ~つづく~

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