ウィー・アー『ザ・ウィアー(The Wier)』フォーエバー!!
劇団昴公演『The Weir~堰』、
9月10日に開幕して17日間16公演。
おかげ様をもちまして好評の裡に無事閉幕いたしました。

このコロナ下にご来場ご観劇賜り、終演後には連日ダブルのカーテンコール!!(千秋楽はトリプル!!!)でお迎えくださった皆々様、誠に有り難うございました。

また
平時であれば遠方から駆け付けてくださる皆様からの「県境を跨いで移動できないので涙を飲んで今回の観劇は諦めますが、応援しています!」という御手紙やメールの数々…。
一同たいへん励みとさせていただきました。有り難うございました。




最終ブログ担当は、当然アカレンジャーことジャック永井です。
秘密戦隊ゴレンジャーの必殺技“ゴレンジャー・ストーム”が、最後にアカレンジャーが蹴って完成することにあやかって。。
…え?まだそれ続けるのかって??
続けますとも、初志貫徹!


さて、
上の写真は千秋楽の前日に撮ったもの。
中央に演出の小笠原響さん。衣装を着ているのは出演者。

黒い服は裏方の正装。
前列中央に舞台監督の三輪。向かって右から舞台監督助手の河田、夏目、笹井、新藤、山田。後方に音響オペレーターの北野さん、照明オペレーターの熊田さん。一番左に 引率のような佇まいの舞監助手の紫藤。

写真外では、
稽古初日にアイルランドの国柄や国民性を教えてくださった翻訳の小宮山さん、稽古初期から幕開きまで度々稽古場に来てくださった美術の松岡さん、衣装の萩野さん、照明の阿部さん、音響の藤平さん。
座内からは、稽古を仕切ってくれた演出助手の小関。& この日は出張中の制作・村上と作業中の大山。
…仮に全員居たとしても みんな舞台上に乗れちゃったんじゃないかしら?と思えるような、可愛らしくも頼もしいチーム。

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「響さんの演出は、宝探しのようで“考古学的”」と、いつぞや書きましたが…
考古学には当然ながら根気と体力が不可欠で。
「明日は通し稽古を二回やりましょう」× 数日。…でも、これが意外と疲れない。
やれば何かを発見してもらえる、という期待感。前回より進歩したぞ、という充実感…。
しかし、考えてみたら…二回観る側は さぞ疲れるのでは??
しかもノンアルとはいえ目の前でうまそうにビールを飲まれたひにゃあ…。
「でもまぁ毎晩ワイン一本あけてるんで。」…いやぁ~なんたる体力。

残念ながら感染予防のため、打ち上げの無い本公演。
響さんには『次回昴へお招きした際には、われわれ堰チームメンバーは いつでも一緒に呑む権利』を約束していただきました♪

なるべく早く、その機会が訪れますように。
響さん、本当に有り難うございました!

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「三輪(舞台監督)は、助手たちと共にピット昴(稽古場 兼 本番会場)に住み込んでいるのでは??」と、キャストの我々は疑っています。

立ち稽古の初日には 舞台は既に立体的に出来上がり、以降 日々色が塗られ、小物が飾られ…。美術の松岡さんが考えてくださった理想のプラン通りに、着々と仕上げられてゆく。
「さぁて、今日は昨日とどこが変わったでしょう?」「あ!床が張られている」「ビールタップが本物になってる!」…間違い探しを楽しむような毎日。
『ぬくもりを感じるバー』との お客様からの好評は、さもありなん。だって全部 手作りなんだもの!!



ビール主任の笹井、衣装主任の新藤も、毎日遅くまでよくやってくれました。
何の心配をせずともビールは快調に出るし (㈲宮林商店様、酒類全般たいへんお世話になりました)、
衣装の萩野さんが用意してくださった“着るだけで役に入りこめる衣装たち”は、毎回きちんと綺麗に整えられて出番を待っている。(ジャックのスーツは敢えてヨレヨレ)

『堰』劇中にも妖精の話が出てくることもあり、おとぎ話『靴屋の妖精』になぞらえて、僕は裏方のみんなを心の中で『黒い妖精さん』と呼んでいました。

くしくも三人は、昴の次回作『クリスマス・キャロル』に出演。
妖精ならぬ“精霊”が出てくる、昴の看板演目。

皆々様、ぜひ三人の表舞台での大活躍にご期待ください!

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演出助手の小関も、稽古の仕切りからスケジュール管理まで お疲れ様でした。
響さんの演出の隣で録ったメモ書きは、これから優れた演出家を目指していく上で 貴重な財産となるでしょう。
(たまたまいない日に集合写真撮っちゃってゴメンよぉ~。)

4人の研修生たちも稽古初日から本っ当に良くやってくれました。
酒場のセットは小道具だらけ。それらを芝居に支障なく管理するには…よほど役者のすることをしっかり見ていないと出来ない。
グラスと水物、タバコの火、お札に小銭、壁の写真や飾り物、棚の置物、などなど。

稽古中、
危うく自分のではないグラスを持ちそうになった時には「先ほどグラスを持ち違えていらっしゃいましたが…」と紫藤からチェックが入り(感染予防のため要注意)、
タバコの火をつけ損ねた時には「マッチが湿気ってましたか?」と夏目が気をかけてくれ…

河田と山田はプロンプをしながらセリフの間違いをチェックし、毎日帰りにそのメモを渡してくれ…



いやぁ~よく見ていたなぁ~君たち!
決して短くはない稽古時間中ずっと集中して。
研修生=見習い期間。それだけ集中して気を配れる君たちは、いずれ芝居で配役されても 気持ちを切らさず稽古に集中できるに違いない。早くその日が来ることを一先輩として願っています。お疲れ様!

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「やっぱり昴の芝居は光と音がイイ!」。
現在は各方面で活躍されている昴OBの諸先輩が、古巣を観に来て必ずおっしゃるのがコレ。今回はいつにも増して高評でした。

古びたバーの光と 昔話(妖精の話)の光。
日常生活の中の音と 記憶や空想上の音。
これらが絶妙に交錯することで、この“実際には事件らしいことは何もないストーリー”を、観客の心の奥底に響くドラマへと導いてくれました。

あぁ~、一度でいいから
劇中で振り返って見たかったなぁ~、妖精話の時の 怪しい光に照らされた店内を。
心底 聞き入ってみたかったなぁ~、昔話の場面に流れる音楽と 最終盤の波の音を。

出づっぱり喋りっぱなしではそうもいかず。
そもそも、その楽しみは客席に居てこそのもの。御客様に 光と音とのコラボレーションをお楽しみ頂くことこそ我々役者の喜びです。
照明の阿部さんとオペレーターの熊田さん、音響の藤平さんとオペレーター北野さん、有り難うございました。

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こうなったら
パンフに名前のある人みんな書いちゃお。



宣伝美術の真家さん。
昴ではいつもお世話になっていますが、
今回のチラシ、実は僕の大のお気に入り。だって可愛いんだもん♪♪
色合いといいイラストといい…とても50過ぎのむさいオッサンが暴れる芝居とは思えない(笑)。しかし劇全体のイメージにはジャストフィット。有り難うございました。


制作の劇団昴さん。
つまり、制作部・村上、大山。

感染対策等いつもと違う公演ということで、今回もっとも神経を使い頭を痛めたであろう制作部。
公演が終わればゆっくり休める俳優部と違い、日々業務は続くのだろうけど…
ひと山越えたところで たまにはのんびりしてちょ。とりわけ僕と同期で同学年の村上、お互い若くはないんだからさ。

えーと、
パンフに載ってる人については以上ですかね。

あ、
載ってないけど いつも大変なのが
票券チーフの茂在。と、日々入れ替わりでサポートしてくれていたみんな。
ことに今回は 感染対策で半減した客席をなんとかやりくりして良く対応してくれました。

昴の場内係はご存知の通り 非出演者たちが、お客様とのコミュニケーションを兼ね入れ替わり総出でやっているのですが…、
今回は「密を避けよ」のお達しを受けて各回必要最少人数。会話も控え 気を使う事柄も多く大変だったことでしょう。みなさんお疲れ様でした。


えぇーと…、
あと誰のこと書いてないかな?
もうみんな書いちゃったかな??
…そうすると もう書くこと無いので…

書き終わっちゃうんだよなぁ…。

書き終わりたくないのですよ!

そりゃ芝居の幕は下りたんですけどね。
身に余る拍手を浴びて、最高に幸せに幕は下りたんですけども……
ブログまで書き終わると、もうホントーに終わっちゃう気がしたりして…。

これを書いてるのがスマホじゃなくて
手紙だったら、
涙で文字が滲んでいるところです。(ウソです…いえ、半分本当かも)

あ!
まだほとんど書いてない人たちがいました!

共演の、後輩4人。
よし、彼らを最後に筆を置こう。。

いつぞや「稽古はいい空気です」と書きましたが、結局 稽古初日から本番千秋楽に至るまで、ずーーっと いい空気でした。
感染対策で窓・ドア開けっ放し&空調回しっぱなしだったから、ではなく、

演出家の的確なサジェスチョンを受け止めて、各人が自分の役と真摯に向き合っていたからだと思います。
それぞれの自分の役への愛着の深さは、このブログの読書皆様にはお分かりいただけるでしょう。

ふつう、
一番期が上の出演者は“座長”と呼ばれ、一座を引っ張る存在であったり、時には場を引き締めたりするもんなのでしょうが…

僕はそんな存在でもなく、引き締めようにも そもそも緩んでいないので その必要がない。

先輩からの“厳しめのアドバイス”は後輩たちにとって、ときに良い刺激だったり、
ときに行き過ぎて逆効果だったり、はたまた 単なる“先輩かぜ”に思われたり…。

それが今回は、不思議なほど 風も波も無し。山場も修羅場も、影も無し。
まぁ全員おだやかな性格だから不思議がることもないとはいえ、

僕にとっては、実は全員が『ガッツリ共演は初めて』の後輩たち。
当初は若干の不安もあったものの…

それぞれが毎日良い準備をして稽古場にやって来るので…余計なアドバイスの必要も無し。
『たまたま年長の一出演者』として、皆を信頼して芝居に臨むことができました。


今回 僕が唯一“先輩かぜ”を吹かせたことを自認しているのは、
「ブログは一人4回、一生懸命書くべし」との指令のみ。

しぶしぶかと思ったら、
すぐさまゴレンジャー話にまでノッてくれる、優しくも頼もしい後輩たちよ、

昴らしい充実の舞台を
みんなで作り上げることが出来て、感無量です。
稽古中も本番中も、ずぅーっと楽しかった。
つくづく、みんなと共演できて幸せだったよ♪♪
ありがとう!!!


以上
『The Weir~堰』ブログ、
長々とご愛読いただき有り難うございました。

最後に

五人揃ってゴレン……じゃなかった、

五人揃って、
『The Weir~堰』!!!!!



| 稽古場日記::The Weir ─堰─ | 13:39 | comments (x) | trackback (x) |
千穐楽前夜

ヴァレリー役のあんどうさくらです。
いよいよ明日は千穐楽。

一昨年、座内報で発表されたキャスティングの知らせに体が浮くほど驚きました。
演出の小笠原さんとは初めての舞台。
出演者は5人。
しかも女性は一人で、他のキャストは全員先輩。
5人しかいないしきっと台詞量も多いだろうなぁとドギマギしながら台本を受け取るとそりゃあまあそうだろうという台詞量、こーれは緊張感ある…と慄きました。

稽古が始まる数日前はうなされ、「夢で」知らない作品の本番を迎えたり、全然セリフを覚えてないのに本番を迎えたりする日々でした(笑)
役者あるあるらしいですが、なんでかしら。
初舞台の時の夢は、なぜか子供を産んだばかりらしく袖にベビーベッドを置いて本番を迎えてました。どういう意味があるんだろう??(笑)

しかし稽古が始まってみると、小笠原さんをはじめ、座組の雰囲気がとてもよく。最初の頃のブログで平林さんが仰ってましたが、出演者も、出演者以外の裏を手伝ってくださっている役者もスタッフも、皆んなが会話に参加して意見を出し合って。
自粛の間に溜め込んだコミニュケーション欲もあったのか、人との会話が楽しくて楽しくて。すごく素敵な時間でした。

席数を減らしてはいるものの、お客様にもたくさん足を運んでいただけて。

なんてなんてありがたい環境なのでしょう。

ラスト一本、さらに気合を入れてのぞみたいと思います。



写真は無事完走できることを祈って鏡前に貼ったアマビエ様。
見守ってくれてありがとうございます!!
| 稽古場日記::The Weir ─堰─ | 20:07 | comments (x) | trackback (x) |
ブレンダン バーンと音。
ブレンダン役の高草量平です。
公演回数も残り少なくなり、お客様から連日温かい拍手を頂いております。

生ビールの扱いにも慣れ、グラスの扱いにも慣れ、ショットグラスを磨きまくり、ブランデーグラスの扱いにも慣れ、小銭をカウンターに置く音が快感になりすっかり落ち着く今日この頃。

稽古中にグラスを割り、生ビールをこぼしまくり、コルクを割り(たまに本番中も割りますが、割れたら割れたで楽しんでいます)
割れたグラスも無駄ではなかったなぁ。

劇中何度かカウンターから出てはホームであるカウンターに入るシーンがありますが、まるでやどかりの気分ですね。

さて、カウンターの中はお客様は観る事がないのですがカウンターの中の説明を少しさせて頂きます。
サーバーの真下に冷蔵庫があり3枚ダスターが用意されています。グラス用1枚とテーブル用2枚です。

ちなみにシンクはありません。只、空いているスペースをシンクがある程として扱っています。架空のシンクの真下にはビンのギネスビールが2本。右側には棚が用意されショットグラス、ワイングラス、ビールグラスが収納されています。
左から冷蔵庫、架空のシンク、棚という順番で並んでいます。そして棚の上、カウンターと棚の間にはレジが設置されています。

足元にはバケツが用意され、お代わりや、少し残ったビールなんかはそこに捨てています。

使い終わったグラスは白いカゴが用意されてるのでそこに重ねています。
そしてグラスを割ってしまった際の対処として箒とちりとりが用意されています(出番がない事を祈ります)

バケツのすぐ前には冷蔵庫があり、ヴァレリーの白ワインを入れています(電源は入っておりません)冷蔵庫の開閉音は劇中でも出しています。冷蔵庫の上にはジャックとブレンダンのロックグラス、ヴァレリーのブランデーグラスが設置されています。

小銭の音やら、グラスの音やらカウンターから色んな音を出しています。

さて1番すきな「音」第一位を勝手に発表します。

ジャック役の永井さんが、芝居の後半で「最後に一本吸うか」の台詞の後に砂利浜からでしょうか。波の音が小さく入ります。

実は1番好きなシーンで、あの瞬間に閉店間際の寂しさと、お店の外は真っ暗で、ひゅうひゅうごうごう風が吹いている。そんな事を体感します。侘び寂び満載ですね。

ブレンダンは自然やスピリチュアルな部分に比重がある役ですが、カウンターに置くビールの音、コインの音、波の音、20ドル札を終うレジの音、グラスを重ねる音、白ワインの栓を抜く音。

そんな音に耳を澄ませていると、なんだかブレンダンを身近に感じますね。



写真はブレンダン必須アイテム ダスターです。
夏目陽希さんがセットしてくれています。
彼女が手に持っているのがグラス用、カウンターにあるのがテーブル用。白いダスターはテーブルで大量にこぼした場合の緊急用です
| 稽古場日記::The Weir ─堰─ | 09:43 | comments (x) | trackback (x) |
『フィールド・オブ・ドリームス』とシェイクスピア
フィンバー役の岩田翼です

17日間の公演期間も半ばの休演日に、気分転換のために、家のテレビに録画してあったケビン・コスナー主演の映画『フィールド・オブ・ドリームス』を観ました。(ネタバレあり)もう上映されてから30年も経つ映画ですが、映画のロケ地であるアイオワ州のトウモロコシ畑の中の小さな野球場のすぐ隣に今年、メジャーリーグの試合ができる設備を備えた野球場を特設。一夜限りでニューヨーク・ヤンキースとシカゴ・ホワイトソックスの試合が行われたという映像をニュースで見て、どうしてももう一度映画を観たくなりました。試合の前には30年前の映画の主演のケビン・コスナー氏が登場して名セリフ「Is this heaven?」を披露したり、現代の選手たちが映画さながらにトウモロコシ畑から歩いて出てきたり、それはそれは感動的でした

映画は昔観た記憶はあるもののほとんど内容を忘れていました。今、僕が出演中の『堰』とは全く関係ない映画ですが、あえてそういう作品に触れることで心の栄養と刺激をもらおうと思って休演日に観るのに選んだ作品でした

が、始まった途端、出てきたセリフが「父親はアイルランド系なんだ」というもの。『堰』の舞台はアイルランド。しかも僕が演じるフィンバーは父親との関係が役に大きな影響を与えています。「むむ、これは・・・」と思いましたが、まあ、アメリカにはアイルランド系の人も多いからね、よくあることだとスルー。しかし続いての映画のセリフが「禁煙して18年」。『堰』のフィンバーも禁煙して18年!なかなかの偶然だわ・・・

そのまま観すすめてたくさん感動して観終えたのですが、この作品って良く考えたら、メジャーリーグを悲しい八百長疑惑で追放されたホワイトソックスの往年の選手たちが幽霊となって再び登場し、夢の再試合を果たすというストーリーなんですよね。ほぼ幽霊が主役。『堰』もテーマはほぼ幽霊・・・

というわけで、芝居から離れて気分転換しようとしたつもりが、どっぷりと同様の世界に浸ってしまいましたとさ、というお話でした。ちゃんちゃん

でも改めて観ても本当に素敵な作品なので心の栄養と刺激はたっぷりといただきました

ちなみにダース・ベイダーの声を担当されているジェームズ・アール・ジョーンズ氏も出演されていて、その声にも惚れ惚れ。『スター・ウォーズ』マニアとしてはたまらん!



話は変わって、前回ブログ担当の平林さんと前々回の永井さんに続き、役作りについて

『堰』で僕が演じるフィンバーは地方の成金実業家で、うるさくて、イヤミで、故郷のみんなからは煙たがられる存在なので、ほぼほぼ僕自身ではないと思っているのですが、考えるとですね、僕が昴で演じてきた役って、金を持ってて威張ってて時にちょっとおバカってのがとても多いんですよ。あれ!?おれってそういうイメージなの?誰か教えて~。でもお金はそんなに持ってないのは確かなんだけどな

まあそれは置いといて、フィンバーは人物の背景の情報量がとにかく膨大なのです。生まれ育ちや、過去と現在の暮らしぶりが波瀾に満ちていることに加え、それ以外にも、セリフにだけ出てくる具体的な人物がざっと20人以上。その中にはかなり濃密に関わっていそうな人物も多いので、そのへんの人々との関係や役への影響を想像したり創造したりすることにかなりの時間を費やしました。稽古中の新たな発見によりそういう人との関係の想定を変更することもしばしば

で、稽古中にもそういう作業が延々と続いていたのですが、それでも、何で突然こんなセリフを言い出すのか理解できない、難問といえる箇所もいくつか。そのうちの一つ、ちょっとネタバレですけど、何で急にスープストックやシチュー鍋の話をし出すのかが超謎でした。まあレストランとホテルを経営してるから不思議は無いのですが、話の出し方が何か唐突で違和感が。しかも近いタイミングで2回出す。考えてもわからないので、まあいいかと放置していたのですが、ある日突然、閃いたのです。こりゃシェイクスピアの「マクベス」だと

ぐつぐつ煮立つ鍋を囲む三人の魔女にそそのかされ父親同然に慕う王を殺し、その亡霊と罪悪感に追い詰められるマクベス。一方『堰』ではフィンバーの家の隣に引っ越してきた三人の娘たち。スープとシチューの大鍋。そして幽霊に怯えるフィンバー

台本では、フィンバーは偉大な父親を尊敬していたようにも読み取れますが、父への対抗意識が垣間見えるセリフもあり、もしやフィンバーもプレッシャーから父を階段から突き落として・・・、なんて想像も。あの日から18年と即答できるのは時効を待っているのかとか。だとしたら隣に引っ越してきた娘たちの父親が警察官だったことにさぞやドキドキしたろうなとか、その父親がシャーロック・ホームズやロンドン警視庁の警部ほど有能な人物ではなく凡庸な巡査であることに少しホッとしたろうなとか想像がふくらみます。そしてフィンバーの苗字は「マック」。マックとマクベス。名前によく使われる字ではありますがどちらもMac。

『堰』の作者はアイルランド人。お隣イギリスの超有名な劇作家シェイクスピアの作品には当然親しんでいたことでしょう。単なる作者の遊び心とも考えられますが、多少なりとも意識していたことは確かなんじゃないかなぁ

まあマクベスと同じ設定をどこまでフィンバーに採用するかは僕の匙加減で良い加減に。いただけるものはいただいて放棄するものは放棄。まだご覧になっていない方はぜひ舞台を観て確かめてみて下さい

だとしたら当然、他の登場人物にもそんな風にあてはまる人物はいないのかという疑問が。そしていたのです。これはジャック役の永井さんが気づいて教えて下さったのですが、ジャックの終晩のセリフの中に「デンマークかノルウェーか」というものがあります。シェイクスピア作品で主人公がデンマーク王子であり、最後はその地をノルウェー王が征服する作品といえば、そう『ハムレット』。そしてジャックの苗字は「ムレン」。ね、面白いですね。そしてハムレットと同様にジャックも若かりしころやるかやらないかでとても悩み苦しんだ

野心のために大それたことをやってしまって後悔と罪悪感と亡霊に悩まされるマクベスまたはフィンバー。やるかどうか迷いに迷ってそんな自分の不甲斐なさに自己嫌悪するハムレットまたはジャック。そんな対比も垣間見える奥深い作品なのです。
| 稽古場日記::The Weir ─堰─ | 11:07 | comments (x) | trackback (x) |
ジムに手紙書いてみた
本番も折り返し地点。
毎日暖かいお客様に囲まれて、幸せいっぱいのジム平林です。

ノンアルコールビールにもすっかり慣れて、酔っ払う事はなくなりました。逆に美味しくグビグビいっちゃって、おかわりのタイミングが待ち遠しい今日この頃。
ノンアルでもカロリーや糖質は多いのでしょうか?体重がメキメキ上昇中です。

『The Weir - 堰 - 』ブログ、今回が平林最後の投稿。一度やってみたかった「ジムに手紙書いてみた」のですが、ちょっとブログには載せられないほど酷いものになってしまいました。
でも載せちゃいます。





〜〜〜〜〜
親愛なるジミーへ
すまん。結局俺は、君がどんな奴なのか確信が持てない。
だからごめん、「ほぼ俺」でやらせてもらってます。
でも、メチャメチャしっくりくるんだよね。もしかしたら俺ら似てる?
じゃ、楽日までよろしく。
〜〜〜〜〜





ね。酷いでしょ。
なんかもっと感動的なもの、例えば「君のおかげで自分に自信が持てた」とか「成長できて感謝してる」とか想像してたんだけど、さんざん考えた挙句にこのザマです。

でもっ‼︎
言い訳させてください。
一年半前に台本をもらって、ジムという人間をいろいろ想像しました。
稽古の40日間は、ジムはどう考えるか?どう行動するか?なぜこのセリフを喋る?なぜここでは喋らない?と、ジムの思考回路と行動パターンを四六時中研究してました。
そして、いろいろなジムを試してみて、余計な物を取りはらったら、「ほぼ俺」が出来上がったんだと思うんです。
つまり、よく一流の役者さんが、「役が憑依する」というような事を仰いますが、まさにそれじゃないかと思うんデスヨ。
だって、こんなに力を抜いて舞台に立てた事は、今までなかった気がしますし、たまに普段の話し方もジムっぽくなってたり。
そしてその状態で舞台に立ってると、不思議な事に、心の引き出しの奥に封印したはずのジムたちがチラッと顔をのぞかせたりするんです。いいタイミングで。
やはり全ての稽古は無駄ではなかったんですね〜。

ジャック永井さんも、この前のブログで、ジャックの役作りは「ほぼ自分」と書いてました。
でも稽古初期から比べると、断然ジャックに憑依されてるように見えます。もちろん、ほかの出演者もみんな。
俺だけ例外という事はないと信じたい。

だから、ジムへの手紙は自分に手紙書くようなもので、なんか照れ臭い。
まして「おかげ」とか「感謝」はしっくりこないのでしょう。
本番が終わってしばらくしたら、また違った見方になるかもしれません。

ダラダラと書いてしまいましたが、
『The Weir - 堰 -』前半戦ほぼ満席、かなりご好評をいただいております。
美術・照明・音響もホントにカッコいい‼︎
後半の日程、まだお席が用意できる日があります!

平林のTwitter(@takayo_ji)にお客様からの感想や劇評をリツイートしてます。そちらもチェックしていただけたら幸いです。

劇場でお会いしましょう‼︎

ジム平林弘太朗



舞台セットの床。
これ作りものなんですよ。
信じられないほどリアル。
| 稽古場日記::The Weir ─堰─ | 00:32 | comments (x) | trackback (x) |
『ジャックという男』
10日に無事開幕しました『The Weir~堰~』。

おかげさまで舞台はつつがなく、順調なすべりだし♪終演後には毎回ダブルのカーテンコールでお迎え頂き、役者冥利に尽きる日々です。

なお
18日以降は まだお席に余裕がございますので、
「このブログは愛読してるけど芝居は観ようか迷ってる」という、ちょっと珍しいあなた!
ぜひお早めにご予約のうえ御観劇のいただきまして、より一層 当ブログをお楽しみくださいますよう御願い申し上げます。

残念ながら
今回の公演中は、感染防止のためポストショートークやステージツアー等のイベントがなく、
また、終演後にお客様にお会いして御感想を伺う機会も持てませんので、

その代わりと申してはナンですが、
公演中もポチポチとブログを更新して参ります。
本日はジャック永井が、
その役づくりについての苦労話を、
ここぞとばかり語りましょう♪

小宮山智津子さん翻訳による台本を受け取ったのが 昨年の冬。6月の本番に向け読み込むも…

春の“第一回緊急事態宣言”により稽古は中止。
公演は「延期。たぶん来年の秋まで」。

以降 この夏に至るまで、外部の出演も中止になったりして……結局まるまる2年間も舞台から離れるという、役者人生で初の 寂しい日々を過ごしました。

幸い『堰』の台本は手元にあり、
時間は もて余すほどありましたので、

さぞやじっくりと“役づくり”が出来たかというと…
それがですねぇ…。。



『ジャック』。
もちろん西洋に広くある人名ですが、

念のため辞書をひくと、それ以外の意味として
『男』と あります。他に『やつ』『少年』等々…。

「ブラックは黒。ジャックは男。つまり自分の本名は、黒男(くろお)だ。」と
ブラック・ジャック(by手塚治虫)も語る通り、

ジャックという名前には
『“ただの男”以外の何者でもない』という意味合いがこめられていると思われます。

50過ぎの、冴えない中年男。独身。
生まれた土地から離れず、親の遺した家で気ままな一人暮らし。
性格は、ちょいヘソ曲がり。
いわゆる“古いタイプ”の人間。。

…これねぇ…
まんま僕なんですヨねぇ。。

“役づくり”などという何か特別なテクニック的なモノがあるのか無いのか、未だによく分からないのですが…
普段の自分とかけ離れた役が回って来た時には…どういうわけか、燃えます!

例えば人殺し。
人を殺したこともなければ今後人を殺す予定もありませんが、
いや無いからこそ、
人を殺す人間について、関係する本を読んだり映画を見たり…頭フル回転+腕によりをかけてアレコレ工夫するのは面白いのかもしれません。おかげ様でこのところ3作品に1本のペースで誰かしら殺しております。ああ楽し♪

翻って、ジャック。
これがですねぇ~…
頭フル回転で考えることようなことが…
うーむ…果たしてあるんだろうか…??

白状いたしますが、

ほぼ自分だと思ってやっております。

え?
そんなに楽してんなら金返せ??
いえいえ、『ほぼ自分』ですよ。
『ほぼ』です。

昨春の、思いもよらぬ巣籠もり期間。
“人生の夏休み”と捉えて、いつかやらねばと思っていた家の大掃除やプチリフォームをすることに。
「5年使わなかったモノは捨てるべし」の掟に従いガシガシと断捨離を進めました、
が…

数十年ほぼ手付かずだった、アルバムの山。
数日かけて一枚一枚見て…
悩んだ末、結局一枚も捨てずに
ざっと整理して押し入れに戻しました。

思い出は財産。。
『堰』では、劇中いくつかの思い出話が語られますが、

ジャックが語る思い出は、
ほぼ、僕の思い出です。

『ほぼ』ですよ!!
| 稽古場日記::The Weir ─堰─ | 01:16 | comments (x) | trackback (x) |
ヴァレリー役のあんどうさくらです。

舞台稽古が終わりついに幕が上がります。
新たな照明や音が加わり、いよいよ準備が整いました。
この瞬間がたまらない。
効果のプロによって、より深い仕上がりへ。

ただ明かりなどは、「振り返ってどんな明かりになっているか見たい…!!」と思っても、当然ながら舞台上にいる役者は振り返ることや、まじまじと眺めることはできません。くぅ〜。

でも共演者の先輩方の顔が、マスクがなくてよく見える。
テレビや家族以外、久しく誰かの素顔を見ることのなかったので、なんだか安心感を覚えたり。
そう安心するのです。
はやくそんな日常が戻らないかなぁ。

振り返れば去年の6月、コロナ禍で延期になり一年と数ヶ月。ついに本番を迎えると思うとより特別な日に感じます。

無事幕が上がり、千穐楽まで走り抜けることができますように。
ご来場くださる皆様のことを、心よりお待ちしております!




こちらは稽古休みにお家で飲んだギネス。
なんてクリーミ〜〜〜!
皆様も観劇後はぜひおうちで一杯…!!
| 稽古場日記::The Weir ─堰─ | 21:45 | comments (x) | trackback (x) |
マスク解禁
出演者、関係者、全員2回のワクチン接種。
2回目のPCR検査(全員陰性!)を確認できたところで、出演者マスクを外しての初めての稽古と相成りました。
舞台上以外では引続きマスクは継続しておりますが。

久々に素顔を見ながらの稽古は新鮮で、開放感があり、、改めて当たり前だったことが当たり前ではないと実感、、、。
そんな新鮮さを感じつつ今日はビールサーバーについて感じた事を少々。 
生ビールを提供するシーンが結構多く、役によっては1リットルくらいの生ビール(ノンアルコール)を飲んでいます。
ちなみにフィンバー役の岩田翼さんは普段からノンアルコールビールは好んで飲むらしくグビグビ劇中で飲んでます。ジム役の平林弘太朗さんもグビグビ飲んでます。
素顔でグビグビ飲むのは最早ビールのCMくらいしか見ることもないので人様のグビグビ飲むシーンは新鮮以外何者でもありません。

ちなみにブレンダン役の私はあまりビールが得意ではないので円錐形のグラスを劇中で飲んでますが、途中炭酸でお腹がパンパンになり、さりげなく静かにゲップしてます(生理現象でご容赦を〜)
そんな生ビールですが、稽古場に設置されたのが25日。当初は中々スムーズに出ず、泡だらけの状態でした。
ディスペンサー(生ビールを一定量出す為の装置とでもいいますか。)の圧力を色々試行錯誤し、試してみたのがビール隊長の笹井 達規君。ガスの圧力をコントロールする為サーバーとディスペンサーを繋ぐチューブを長くしてみましょう。と。圧力のストロークが長くなって安定するかも?
果たして結果は彼の読み通り。安定してビールを提供しています。
マスク越しの乾杯から素顔で乾杯へ。

はやく当たり前の日々が来ることを願うばかりですね。
| 稽古場日記::The Weir ─堰─ | 22:45 | comments (x) | trackback (x) |
花火と川と竜神と
こんにちは

フィンバー・マック役の岩田翼です

夏が終わってしまいましたね。9月になった途端に秋雨が続いてひんやりした日が続いています。皆様いかがお過ごしでしょうか?

突然ですが、夏と言えば僕は花火が大好きです。役者になっていなければ花火師になりたかったくらい。学生時代には東京都府中市にある花火の打ち上げ会社でアルバイトをしていたこともありました。墨田川の花火コンクールでも表彰されるくらい実力のある会社でした。研修を受けて危険物免許を取得し、夏休みやゴールデンウィークになると横浜八景島シーパラダイスや東京ディズニーランド近くに泊まり込みで滞在し毎日夜の花火を打ち上げたり、ここ数年はオリンピックのために中止されていますが東京湾大華火祭に昔ながらの職人さんたちと共に参加したことも思い出深いです。僕が働いていた会社は今主流の、音楽と花火をコンピューター制御でシンクロさせて打ち上げるシステムを使い出した走りのような会社だったので、主な仕事は昼の間に花火の筒に玉を入れそこからつながる電線のコードを、打ち上げを制御する装置のコネクタに順番を間違えないように差し込んでいく作業でした。打ち上げはコンピューター任せなので打ち上がっている最中は落ちてきた火の粉で他の花火や芝生に引火したりしないように下でハッピにヘルメット姿でホースで水をまくのが仕事でした。一方昔ながらの職人さんは花火の大きな筒に手で直に火種や玉を放り込んで打ち上げることも多く本当に危険と隣合わせでした。火種を放り込んだ瞬間に耳をふさぐのですが、あまりに近いところにいるので耳が遠くなっている方も多かったです。

とまあ、花火バイトの話と芝居は直接は関係ありませんが、どちらも本当にたくさんの準備をして、日ごと夜ごと打ち上げてしまえばそれで終わり。儚いなぁなどと秋の夜長に物思うのです。

今は花火の仕事には関わっていませんが、遊びでやる花火にもちょっとこだわって浅草橋の家庭用花火専門店まで買いに行きます。少し値は張りますがスーパーやホームセンターで買えるものとは持続時間や迫力がちょっと違います。地元のさいたまを流れる芝川の河川敷、広大な緑地が広がる見沼田んぼの一角で家族で楽しんでいます。見沼田んぼは劇団昴の事務所のある豊島区と同じくらいの広さ。Googleマップや画像検索などで見ていただくとその広大さや緑の美しさがおわかりいただけると思います。大好きな場所です。

そうそう。今回の芝居では川に堰を作ってダムにすることで妖精が現れなくなってしまったという話が出てきますが、さいたまの見沼田んぼには逆に堰を壊して干拓することで、竜神が空へ帰ったという伝説があります。

ちょっと長いですが、これを読んでから今回の公演を見ていただくと、こうした伝説がより身近に感じられて、よりお楽しみいただけると思いますよ~

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『見沼と竜神ものがたり』


「見沼田んぼ」は江戸時代の中頃まで、大きな沼でした。

田畑を耕すのに必要な水を八丁(約860m)もの長い堤でせきとめてできたこの沼は「見沼溜め井」と呼ばれていました。

日光の中禅寺湖にも負けないほど大きなこの見沼は、江戸時代の初めに徳川家康の命令で作られたといわれています。

その見沼は、田畑をうるおすだけでなく、フナやシジミ、ウナギなども沢山とれました。

村人たちは、ゆたかな恵みを与えてくれる見沼に感謝して暮らしていました。

子供たちも魚釣りをしたり、泳いだり、水遊びのできる見沼が大好きでした。

この見沼には昔から、「見沼の主(ぬし)」といわれる竜神が棲(す)んでいるといわれていました。

いつも静かな見沼も、ひとたび台風が来ると、激しく波立って、船を転覆させたり、雷鳴がとどろき、大雨が降ると洪水で村人を困らせていました。

村人はそんなとき「竜神様のたたりじゃ」と叫びながら、力を合わせて家や田畑を守りました。

激しい雨や風もやんで青空に戻ると、「また竜神様を怒らせないようにがんばろう」と言って、自分たちを戒めていました。

竜神は自然の力を使って、村人たちに怠けたり、悪いことをするとたたりがあることを教えていたのです。

見沼の周りにある神社の中で、高鼻(大宮区)の氷川)神社[男体社(なんたいしゃ)]と宮本(緑区)の氷川女體(ひかわにょたい)神社[女体社(にょたいしゃ)]は、ともに武蔵一宮(むさしいちのみや)と言われ、ふたつの神社の間には、その子といわれる中川(見沼区)の中山神社[王子社]があります。

この三つの神社は、なぜか不思議なことに見沼を見守るように一直線で結ばれているのです。

その神社の中で竜神をまつるお祭を遠い昔の平安時代から行っていたのは氷川女體神社です。

祭の日には沼の一番深いところに竹を四方に立ててしめ縄をはり、おみこしを船にのせて行き、お祈りをしていました。

そのあたりは、今でも「四本竹(しほんだけ)という地名で残っています。

その祭は「御船祭(みふねまつり)」といいましたが、形や名を変えて、現在も行われています。

ある日のことです。村人たちが腰を抜かすような出来事が起こりました。

八代将軍吉宗の命令で井沢弥惣兵衛為永(いざわやそべえためなが)というお侍が江戸<今の東京>からやって来て、「これから見沼の水を抜いて(干拓)田んぼにする」と言うではありませんか。

「見沼の水がなくなったら生きていけなくなる」

村人たちは大騒ぎです。竜神のたたりもあるに違いありません。

弥惣兵衛が見沼に来たのには訳がありました。

その頃、幕府の財政は大そう苦しくなっていました。

また江戸の人口は百万人にも増え、食べるお米が足りなくなっていました。

そこで吉宗は各地に新しい田んぼを増やし、少しでも多くのお米を作ろうと計画したのです。

弥惣兵衛は吉宗にその任務を与えられ見沼にやってきたのです。

弥惣兵衛は将軍吉宗が心から信頼する家来で優れた土木技術の持ち主でした。

弥惣兵衛は反対する村人たちの意見をよく聞きながら、見沼の代わりに利根川から水を引く計画も話し、根気よく説得しました。

少しも偉ぶらない、誠実な人柄の弥惣兵衛の話に村人たちは安心し、やがて皆協力することになったのです。

いよいよ工事に取りかかる日が近づきましたが、弥惣兵衛は工事の準備と村人たちの説得に疲れ果てて、降雨時の詰め所だった大日堂(だいにちどう/大宮区天沼)でとうとう病に伏してしまいました。

そんなある番、寺で寝ている弥惣兵衛の枕元にどこからともなく美しい娘があらわれ、工事を始めるのを九十日間延ばしてくれれば、必ず病気を治してあげるというのです。

この娘の話を聞いていた家来は障子を少し開けて覗いてみました。

美しい娘どころか、大きな白い蛇が弥惣兵衛の体を真っ赤な舌でぺろぺろとなめ回しているではありませんか。

美しい娘は竜神の使いだったのです!

竜神は沼の生き物たちや自分の棲むところを決めるまで工事を延ばしてほしいと思ったのです。

このことがあって、気味悪がった弥惣兵衛は詰め所を万年寺(ばんねんじ/見沼区片柳)に移しました。そして娘の言うことを聞かず計画通り工事を始めてしまいました。

干拓には大勢の村人の手を借りなければならなので、農作業の暇な冬の間に工事を終わらせないと春の田植えができなくなってしまうからです。

ところが、工事が始まるとたびたび大雨が振り、洪水で土手が崩れ、せっかく造ったものも次々壊されてしまいました。

村人たちは、口々に「竜神様のお怒りだー!」「竜神様のたたりじゃー!」と言って恐ろしがりました。

そんなある日のことです。

万年寺で夜遅くまで工事の絵図面を見ていた弥惣兵衛のもとへ、今度は別の美しい女が訪れ、「沼に棲む生き物たちみんなの願いです。どうかこの干拓工事をやめてください」と涙ながらにたのみました。

弥惣兵衛がふと、後ろの障子を見ると、行灯の明かりに揺れる女の影は・・・

なんと!恐ろしい竜そのものだったのです。

見沼の竜がやってきたことを知った弥惣兵衛は、「多くの人間の命を救うためにはたくさんの米が必要なのだ。見沼の干拓を止めるわけにはいかないのだ」と竜神の申し出を断りました。

すると「見沼を干拓すれば沼の生き物はみんな死ぬであろう。人間だけが生きられればそれでいいのか、勝手な人間どもめ!許さんぞ!お前たち人間どもを」と竜神の怒りの大声がとどろき、弥惣兵衛の体は何かに締め付けられて身動きできなくなってしまいました。

弥惣兵衛は「利根川の水を引いて用水路を作り、沼の生き物たちが棲めるようにし、できるだけ自然を壊さないようにしよう。この工事が終わったら私は食われても構わない、この命を竜神に捧げよう・・・。だからこの工事を何とか続けさせてくれ」と必死に頼みました。

静かな時が流れ、竜神の穏やかな声が聞こえてきました。

「お前の気持ちはよくわかった。見沼を人間に預けようぞ!精一杯やるがよい」

すると、それまで締め付けられていた弥惣兵衛の体はスーッと楽になりました。

竜神は、弥惣兵衛が命がけで仕事に取り組む姿に感心して見沼を明け渡す決心をしたのです。

それからというもの天気の良い日が続き、工事は計画通り半年もかからず、沼を田んぼに変えることができました。

八丁の堤を切って沼の水は抜かれました。新しい用水路に利根川の水も流れてきました。弥惣兵衛と、村人たちの努力が実ったのです。

そうして・・・大きな沼は広い田んぼになりました。「見沼田んぼ」です。

竜神は沼の水を干すと同時に天に昇りました。

完成した見沼田んぼを空からみた竜神は、見沼の空を大きく舞いました。それを見た弥惣兵衛や家来、村人や子供たちまで[竜神様ー」「ありがとうございました」と手を振ってお礼を言いました。

今でも竜神は空からさいたま市を見守っているのです。

<終わり>

(さいたま竜神まつり会Webサイトより引用)
| 稽古場日記::The Weir ─堰─ | 21:51 | comments (x) | trackback (x) |
ジム崩壊、そして再生へ
ジム役、カレー大好き平林です。
稽古は、通し稽古がメインになってきました。
そして、今週からビールが本番用になりました。なんと本物の生ビールサーバーを使ってます。
残念ながらノンアルコールビールですが、これが美味しい!
そして不思議なことに、酔っぱらいます。
最初の通しの時は、ビールを飲んだ直後から指先が痺れて、頭がぼうっとして、セリフがうまく出てこない程でした。
「ノンアルでも微量のアルコールが入ってる」説と「脳が錯覚を起こす」説があったのですが、回を重ねるごとに少しずつその現象が減ってきたので、おそらく後者だと思います。人間の身体の不思議を実感した今日この頃。

さて、なんとなくシリーズ化したジムのキャラ紹介。
稽古でいろいろ試して、とにかく自分の引き出しの中から使えそうな物をぶちまけて、ジムの役割や周りとのバランスを考えて、日々進化させていったのですが、どれも演出家にはハマらないご様子。
そして2、3日前、ちょっとしたダメ出しに対応できず、ついに破綻…。
打つ手なしの状態に。

もうやけっぱちで、人格ごと180°方向転換してやりました。

ところが(実は期待通りなのですが)、演出家には、最初は驚かれましたが、なんとなく琴線に触れたようで、それをベースに、今までのいいところを足して行く方向性に決まりました。

ジム崩壊の理由は、先程書いた「役割とバランス」を考えたせいで、おかしな世界線に迷い込んでしまってた事のようです。
実は僕は、よくこれで失敗するので、
「自分が、【全体のため】と確信してることほど、客観的に見たらほぼ間違ってる」
と思うようにしてるのですが、また同じ失敗を繰り返してしまいました。

破綻したジムたちは、そっと引き出しの奥にしまって、いつか日の当たる場所に出られる時を待つ事にします。

ちょっと愚痴っぽくなってしまいましたが、
ほとんどの役者は、稽古終盤に入ったあたりで、いろいろなジレンマにぶつかり、愚痴る傾向があります。
初日までに最高のものを作るプロセスなんだと思います。
これも、公演ブログの臨場感として楽しんでいただけたら幸いです。
| 稽古場日記::The Weir ─堰─ | 16:08 | comments (x) | trackback (x) |

  
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