先輩の背中
今回、僕が『リア王』にキャスティングさせて頂いての何よりも得難い報酬は、
稽古の段階から先輩方の演技を観られることです。先輩方の芝居の作り方、
また、芝居へ対する向き合い方を目の当たりに出来ます。

僕が最近の稽古で強く心惹かれるのは、道化役・西本裕行さんです。

一幕ラスト、リアと道化が嵐に立ち向かう場面。
稽古中、傍から見ていて、一体これは何なんだろう…と思います。
どうしてこの人は、80歳をずっと過ぎてもなお床に這いつくばって芝居を続けているのだろう。

稽古中、西本さんは、ふとした瞬間、演技しているのか、していないのか見ていて分からなります。
嵐の場面、西本さん自身が本当に嵐の中に存在し、遠くを見る眼差しをされているようで…
僕は傍からその姿をみて、何とも形容し難い気持ちになりました。
どうしてこの人の姿はこんなにも僕の心を激しく揺さぶるのだろう?
西本さんのお芝居に対する純粋さが、見ている人の心に共鳴を呼ぶのだろうか?
答えは結局みつからず…

西本さんのそんな姿は、僕にとって大きな刺激です。
昴の創立メンバー、座内で最も目上の方が、稽古場を転げまわり、
毎稽古で新たな演技を生み出そうと苦心している…
これは若手にとっても、ベテラン陣にとっても、これ以上の励みはないように思います。



稽古後、少し西本さんとお話しました。
「毎回の稽古で心がけている事ってありますか?」と問うと、

「毎回稽古は本番のつもりでやってるよ。でもなかなか出来ないんだけどねぇ。
必死でやるけど、うまくは出来ないからね。
僕は体育系だから、身体が納得しないと芝居ができないんだ。
むかし「幹の会」でリアを上演した時、道化役を中原ひとみさん、
君は知らないだろうけど小柄な女優さんがやっていて、
その方の飾らない台詞がリアの心に深く刺さるんだ。
(稽古場の)みんなは、まだ少し芝居がかり過ぎてるかも。ちょっと酔ってるかなぁ(笑)。
道化はリアを愛していると思う。リアに対しての皮肉や悪口は愛情の伝え方が素直じゃないだけで。
そう言うのがお客さんに伝わればいいなぁ。」

大先輩の後ろ姿を見ながら、稽古もラストスパート。
演出・菊池准さんのもと、更に芝居に磨きをかけてゆきます。
初日幕開きまで、あと一週間です…!

| 稽古場日記::リア王 | 03:17 | comments (x) | trackback (x) |

  
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