「おお、ロミオ ロミオ。あなたは何故ロミオなの?」
突然何をトチ狂ったかと思われた方もいらっしゃるでしょうが、ご安心下さい。賛否両論ございましょうが私は正気です。まぁ…困った事に、魂がフラりとお散歩に出掛けてしまうキライは多少ありますが(笑)

さて…『どん底』ブログなのに何故『ロミオとジュリエット』なのか。
それは私が「名前」を呼ぶ事の重大さを初めて実感した科白だからです。

日常生活で何気なく呼んでいる名前ですが、お芝居の科白で発する名前はなかなかやっかいなもの。どのような思いで、どのような音でその人の名前を呼ぶかでお互いの関係性が垣間見えてしまうから。ジュリエットがひとりロミオの名を呟く時「ロミオ」という音の中に、ロミオに対するジュリエットの思いが溢れ出ていなければならないのです。
実際に音にしてみるとこの科白、物凄いハズカシイ科白です!そしてその恥ずかしさをものともしない恋のエネルギーが必要な科白なのです!!

少々興奮してしまいました。さて、イタリアのヴェローナからロシアの木賃宿に話を戻しましょう!なんと言ってもこれは『どん底』ブログですから。

何故延々と「名前」にこだわってしまうのか…。違うのですよ、上演台本とゴーリキィ全集の登場人物の名前の記述が。

[上演台本]
コストィリョーフ
ワシリーサ
メドヴェーヂェフ
ペーペル
クレーシチ
クヴァシニャー
ゾーブ

[ゴーリキィ全集]
ミハイール・イヴァーノフ・コストィリョーフ
ヴァシリーサ・カールポヴナ
アブラーム・メドヴェージェフ
(「熊」という意味)
ヴァーシカ・ペーペル
(「灰」という意味)
アンドレイ・ミートリチ・クレーシチ
(「やっとこ」という意味)
クヴァシニャー
(「こね粉桶」という意味)
めっかちゾーブ

*因みに他の登場人物達の記述は変わらず。


こうして並べて比べてみると印象が随分違いますね。ゴーリキィ全集よりも上演台本の方が記号的で、あえてその人の履歴を消したような…。これは意図的にこの記述にしたのでしょうか?
宿屋の主人一家はともかく木賃宿に巣くう人々はそもそも本名を名乗っているのかも怪しいという点を考えると実に興味深いです。

登場人物の中でも名前すらないのが「役者」と「男爵」。

「名前を失くすってことがどんなにみじめなものか?犬ころだって、ちゃんと呼び名はあらぁ…」
「この女も、名前を失くしやがった!」

役者のこの科白を聞くたびに色々考えてしまうのです(もう死んじゃってますけど)。奥様を「お母さん」とか「おい」とか呼んでいる世の中の旦那さん方、たまには奥様を名前で呼んであげて下さいね~とか。
だってウチのダンナのクレーシチは「アンナ❤」って一度も呼んでくれないんだもん!まぁ、こっちも「アンドレイ❤」じゃなくて「あんた」って呼んでますけどね(笑)クレーシチとアンナにも名前で呼び合っていたラブラブな時代があったのかなぁ…。

横たわっている間も魂はフラフラ抜け出して舞台上を浮遊する…実は死後も何かと忙しいアンナ・大坂でした!


| 稽古場日記::どん底 | 22:30 | comments (x) | trackback (x) |

  
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